島田忠司

島田忠司デザイン事務所
島田 忠司氏

PROFILE

愛知県立芸術大学デザイン専攻卒、リクルート、ソニーミュージックを経てバナナスタジオ設立。ブランケット・プロジェクトを経て再びフリーに。音楽、トイ、ゲームなど趣味性の強いジャンルの企画、プロデュース、ロゴ制作からパッケージや広告のアートディレクション、デザインを手がける。おもなクライアントはスクウェア・エニックス、DMM、海洋堂、メディコム・トイなど。

ホビー・グッズ業界を牽引するリーダーたちにフォーカスを絞り生の声をお届けする、株式会社カフェレオ 内山田の対談企画。第9回目のゲストは、デザイナー・アートディレクターという肩書きを持ちながら明らかにその枠に留まらず、数々のヒット商品に関わってきた島田忠司デザイン事務所 代表 島田忠司氏が登場!実は内山田からすると、はじめは「ナゾの人」で、未来を構想した気になる場所でなぜかいつも浮上する不思議な存在とのこと。そのベールを剥ぐつもりで始まった対談でしたが、出てくる話は我々の想定を遥かに超えた驚愕の島田ワールドでした!デザインはもちろんのこと、謂わば思考や行動における「クリエイティブ」とはこういうことか!と感じさせる一連の逸話も、島田氏曰く「自分が欲しかったから」と一蹴。一方で今まで出会い、教わってきた人から得た経験を大切に自身に取り込み、実践されている姿には襟を正す思いでした。ホビー業界に限らず、他業界に向けて発信してもどこかで胸に突き刺さるであろう「自分の好きを形にする」話を最後までお楽しみください。※随所で垣間見る内山田のホンネも必見です。

[スピーカー]
島田忠司デザイン事務所 島田 忠司氏
株式会社カフェレオ 代表取締役 内山田 昇平
取材日:2018年1月17日 場所:BASE2500
構成:里見 亮(有限会社日本産業広告社)

もう、ずーっと狙っていましたね。「ここにパイプがあった!」と(笑)

内山田 昇平(以下/内山田):今日はお忙しいところをありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

島田 忠司氏(以下敬称略/島田):こちらこそよろしくお願いいたします。

内山田:いきなりですが、島田さんは最初僕にとって…「ナゾ」の人だったんですよ…。

島田:「ナゾ」ですか(笑)

内山田:かれこれ10年ぐらい前の話ですが、当社のメーカー部門のアルジャーノンプロダクトで1/144スケールの戦闘機のトレーディングフィギュアを発売している時期に航空自衛隊に出入りしているガチのミリオタのスタッフがおりまして(笑)。彼と知り合いだったんですよね?

島田:元々は僕がアルジャーノンさんのいちユーザーで。商品を買いまくっていたんですよ。

内山田:そうなんですか!これは初耳!

島田:そうなんですよ。当時、食玩ブームの流れがあって海洋堂さんとかアルジャーノンさんとか各社ミリタリー系の商品を出されていました。で、僕はプラモデル世代ですが、模型を作らなくなってしばらく経った頃に食玩ブームがあって。それがすごく精巧で!! 1/144スケールは大きくないからスペース的にもいっぱい置ける訳です。それで買いまくってる時に、アルジャーノンさんがすごく「通」なラインナップ出されていて。「あっこの会社変態がいる!」と思ってました(笑)

内山田:確かに「KGA」というニックネームの変態スタッフの担当がいましたけど(笑)

島田:そのKGAさんとたまたまツイッターで知り合ったんです。

内山田:えっ、そうなの?

島田:そうなんです。KGAさんのツイートに僕が「いつも買ってます!」と被せて言ったら、「ありがとうございます!」みたいな挨拶の応酬が始まって。「ここは表面上だけでなくダイレクトに話をした方がいい!」と思ってDMを送るようになったら、リアクションがとてもよくて。たぶん同じ波長だろうと思って「遊びに行っていいですか?」となり…

内山田:本当に最初の頃はいちユーザーだったんですか!?

島田:もうカートンで買っていたくらいなので!

内山田:その節はありがとうございました(笑)

島田:こちらこそ(笑)

内山田:元々、僕はそんなにオタクではなくて、ビジネスとして「こうすれば面白いんじゃない?」という視点で見ているんです。ある時何かのタイミングで、「ベアブリックでブルーインパルスをやったら面白いよね」という企画が僕のところにも届いて、「面白いけどそんなことできるの?」と半信半疑でした。当時すでにベアブリックはすごい売れていたし、「ベアブリックをオリジナルで扱うこと自体できるの?」と思っていて。ブルーインパルスと言ってもその権利とかの扱いも分からなかったし…。

島田:それに、そもそもベアブリックというアイテムを、防衛省に理解してもらえるのか?ということが一番不透明でしたよね。

内山田:そうそう。で「本当にできるの?」とスタッフに聞いたら、「ちょっとツテがありまして」と言うから…。あっ、それが島田さんだったんですか?

島田:そうなんですよ。その方にお会いした時に「実は温めていた企画があって。ブルーインパルスのベアブリックなんですけど…」と話したら乗ってこられたので、「よし食いついた!」と(笑)

内山田:島田さん自身がこの企画を温めていたんだ。

島田:もう、ずーっと狙っていましたね。「ここにパイプがあった!」と(笑)

内山田:ここ最近は島田さんのことが解ってきたんだけど、当初はデザイナーということは知りつつ、「なんでデザイン事務所の人がベアブリックの企画をやっているんだ?」と。

島田:謎ですよね~怪しい…(笑)

内山田:半身半疑プラス怪しかったですね(笑)。またKGAと呼ばれるスタッフは更に怪しいから!申し訳ないのですが、最初僕は「これ大丈夫なのか?」と心配していましたね(笑)

ベアブリックがきっかけでその人にとって買うことがイベントみたいになるんですよね。

内山田:でも実際に進行していったら、ブルーインパルス50周年のロゴとか展示飛行の演目がレイアウトされたデザインが上がってきて「もうこれメッチャカッコイイ!」となったんです。それに後々聞いた話ですが、ベアブリックって本当に名だたる有名ブランドと幅広くコラボしているけど、官公庁との企画は初めてだったんですよね?

島田:そうなんですよ!

内山田:防衛省としても異色のコラボだったんでしょうね!あと、こういう時って面白い企画が出るんだなぁと思ったのですが、5番機だけ激しい機動で逆さまになっていることが多いんです。それを見越して5番機のヘルメットだけ、最初から「5」が天地逆さまにプリントされているんですよね。それをベアブリックでも再現したという!

島田:そこがまた通を喜ばすところなんですよね!マニアを「あっ、ちゃんと作ってる!」と思わせるポイント。で、こちらのセールストークとしても「実は…」と一言加えられるし、買ってくれた人が友だちに説明する時も、ひとつネタを振れる訳ですよね?そういうものを提供することが大事というか、ベアブリックの面白さってこういうところだと思うんです。

内山田:ただ、当時はうちの会社も規模が小さかったし、しっかり流通させる自信が無かったんですね。そして「どこで売るんだ?」となった時に、11月3日に入間基地の航空祭があるからそこで売ろう!となって。告知だって今みたいにSNSはそんなに盛んではなかったからしっかりできなかったんだけど、蓋開けてみたらすごい人で。もう売り場まで走ってくる感じで!

島田:すごい人でしたよね!追っかけている方々がいて、その人たちを全然行ったことのない場所へ「お誘い」することができる、ちょっとしたメディアでもあるんですよね。ベアブリックって。ブルーインパルスとか航空祭とかに全く興味のない人が、「ブルーインパルスのベアブリックを販売します」と告知したらすぐにチェックしていただけるんです。電車賃払ってわざわざ駆け付けてくださる。ベアブリックがきっかけで、その人にとって買うことが一種のイベントみたいになるんですよね!「初めて観たけどブルーインパルスすごかったよ!」と、その人にとっての世界も広がる。こういう面白さがベアブリックの魅力だと思います。

内山田:お土産としても最高ですしね!

島田:最高ですね!

内山田:だってパイロットの方たちも買いに来てくれたんですよ。これが島田さんと初めてお仕事させてもらったきっかけでしたね。その後ワンフェスとかにも定期的に遊びにきてくださったりしていたのですが…いまいち謎で(笑)

島田:はい(笑)

内山田:当時はデザイン事務所にいる「オタクのデザイナー」なのか、プロとして「ホビー業界にいる人」なのか、ブルーインパルスのベアブリックの仕事の後でも僕は正体がわからなかったです(笑)

島田:でしょうね(笑)

内山田:その辺りのベールを剥いでみようと思ったのが、実は今回の対談をお願いした理由だったのです。

ときどき…言われますかね。「よくできたねぇ」と。

内山田:今までの対談の中でも今回はちょっと異色なんですが、島田さんにはびっくりしちゃうようなコラボのお話とか、いろいろお持ちですよね?

島田:いやいや。でもそこで言うと、上野にある国立博物館の話は面白かったですね。僕は元々はベアブリックのコレクターだったんですね。今も集めてますけど(笑)。集めながら「もっとこういうものを」という個人的な想いがつのっていて。何か興味深いコラボ企画を考えれば、見ず知らずの自分でもベアブリック制作でご一緒させていただけるのでは…と考えていました。そんな時に当時勤めていた会社の社長から「国立博物館のミュージアムグッズを作りたいという話があるけど、何か面白い企画ない?」と聞かれ迷わずベアブリックを提案しました。

内山田:それはカッコイイ!

島田:で、たぶん国立博物館って決裁権を持ってらっしゃる方は年配な気がして、だとしたらベアブリックは分かってもらえないかも…と思ったのです。テーマは国宝の「風神雷神」。ベアブリックを含めた2種の企画をプレゼンしました。当初は違う企画が選ばれ進行しようとしていたんですが、担当者さんからベアブリック採用の連絡が入りました。インパクトを考えてベアブリックを強く推される方がいらっしゃって急遽変更になったとか。僕としては、国立博物館のしかも国宝「風神雷神」をベアブリックにするというのであれば、初めてのお付き合いとなるメディコム・トイ(ベアブリックの発売元)にきっと喜んでいただける!と大喜びだったのです。そこで初めて「面白い企画があるので」とアポイントを入れさせていただきました。

内山田:えっ、ウラをとって提案した訳ではないんだ??

島田:ぜんぜん(笑)

一同:えーーーっ!すごい………。

内山田:強烈だなぁ(笑)

島田:日本の美術系のベアブリックって今までなかったんですよね。このプラスチックと日本美術のミスマッチな感じが、すごく魅力的でした!だから、プレゼンの前から「絶対メディコム・トイさんは喜んでくれる!」と自信がありました。それ以来、メディコム・トイさんが展開されないジャンルや企業の企画を持ち込み続けていたので、お付き合いがどんどん深くなっていきました。

内山田:この商品は売れました?

島田:売れました。博物館からこの調子だと足りなくなりそうなので生産数を増やして欲しいと言われて。

内山田:国立博物館から「お願いだから増やして欲しい」って…言われてみたいよねぇ…人生の中で(笑)

島田:(笑)

内山田:それが島田さんのいちユーザーからこの業界の仕事に入った第一歩だったんですね。

島田:そうですね。デザインだけではなく、いろいろなスイッチを切り替えて行く作業が必要だということを、初めて体感することができた気がします。全体像を見なければダメだとか。僕はもう作りたい一心で持って行っていただけだったんでこれじゃダメだと。

内山田:それは僕も同じだし感覚は分かるんですけど………そんなにグイグイいけちゃうものなんですかね?みたいな(笑)

島田:ときどき…言われますかね。「よくできたねぇ」と。

内山田:国立博物館でベアブリックとか、普通そういうところから攻める?というか…。

島田:自衛隊基地で売るとか?(笑)

内山田:そうそう(笑)。手が届くところに手を伸ばしているのではなくて、普通の人からしたら考えつかないようなところから寄せて来ているから、むしろ成功する確率が高いのかな?島田さん的に言うとですけど。

島田:そうですね。距離が遠ければ遠いほど裏に回ってみたら近い、みたいな(笑)。グラフィックデザインの仕事もそうなんですが、意外と遠いところから発想した方が面白かったり。仕事で考え事をしている時って、どうしても安全牌を作りがちなんですよね。そうするとどんどん頭の中がシュリンクしていきます。全く関係ないものをまず「ドン!」と持ってきて、今回の仕事に合うかどうかをやってみた方が結果的に面白かったりするんですよね。

「デザイナーです(笑)。アートディレクター」

内山田:改めてなのですが…「デザイナー」なんですよね?

島田:デザイナーです(笑)。アートディレクター。

内山田:そもそもグラフィックデザイナーになろうと思ったきっかけは?

島田:ルーツで言うとプラモデルですね。子どもの頃、プラモデルって作り上げて最後にデカールというマークを貼って仕上げるんですが、出来上がって友だちと見せ合いっこすると全部同じなんですよね…。それじゃ面白くないと思い、自分で部隊のマークとか塗り出したんです。そこがたぶんルーツですね。親父がミリオタ(笑)だったので、いっぱいあった本から部隊マークとか引っ張り出して、トレースしてマークを塗っていましたね。で、高校の選択授業で美術を選択して、ある時その先生から「おまえ絵が好きか?」と聞かれたので、「絵は好きではありません。デザインが好きです」と答えたら芸術大学の存在を教えてくれて。それで志望しました。

内山田:そういう道もあるよ、と。

島田:ですね。で、芸大入って卒業して。新卒でデザイナーとしてリクルート社に入りました。ディレクション能力を養いなさい。外注すれば自分で1つ作る同じ時間で2つも3つも作れる…そう教わりました。ただ、新卒で入って何の実力もないのに指示を出すことにジレンマを感じたりもしていました。自分は「こうしたい」というイメージが出来上がっているので、それを他人に説明する能力というか、他人に分かってもらうための話の持っていき方はこのリクルート時代に培われた気がしますね。

内山田:最初に培われないとダメなことってありますよね?歳をとったら難しい部分。歳とってからは応用していけばいいんだし。入口の経験ってすごく大事なんだなと思います。

島田:そうですね。新卒でそういう会社に入れて3年間過ごせたのは、今振り返ると大きいですね。ただ、デザインという仕事で考えると、もっともっとベーシックなトコから鍛えられる必要があると感じていました。当時上京した芸大仲間がいて、それぞれ企業やプロダクションなどに勤めていたのですが、数人で月イチくらいで会ってお酒を飲んでいました。就職して1年半くらい経った頃かなぁ…ふと自分が「危ない」と思い出したのです。みんな「しんどいしんどい」なんて愚痴っているのですが、話を聞いているとステップアップしてるんですよ。ふと気が付くと、僕は人にやってもらっているだけで「自分でちゃんと手を動かしていないぞ」と…。

内山田:自分の感性の中での危機感だったんですね。

島田:はい。そのうちに部下もできて管理するような立場になって、どんどん手を動かす機会が減っていく訳です。だから時々部下をサッと帰して、夜中に自分でガーッとデザインしてました(笑)。自分のキャリアを考え、このままだと危ないと思いリクルートを辞めることにしました。リクルートを早々に退社したデザイナーの同期がいて、彼に辞めると電話をしたら「やっと気が付いたか」と言われ(笑)、遊びに来いと言ってくれたので彼の職場であるCBS・ソニー(当時)を訪れました。

内山田:その彼は早々に気が付いたんですか?

島田:新人研修期間中すぐに気付いたと言っていました(笑)

内山田:マンガみたいな話だな(笑)

島田:そのソニーに行ったのですが、もうカルチャーショックでした。一人ずつパーテーションで区切られていて、レコード会社なので音楽がガンガン流れてるし、打ち合わせルームにはアイドルがいて…「なんやここは!」と。「自分で手動かしてるの?」と聞いたら、「もう自分で手動かすしかないから」と返ってきて。うわーいいなぁーって(笑)。今、募集しているというから受けたら受かって、そこで働くことになりました。初出社の日から徹夜だったのですが、喜んでニコニコやっているもんだから、先輩には「なんやコイツ?」と気持ち悪がられていました(笑)

内山田:やりがいのある仕事がそこにあったんですね。

島田:そうですね。そのクリエイティブルームのいいところって、それぞれ自分のブースに自分が担当したジャケットやポスターの色校を貼ってあるんですよ。それを先輩たちが見て、「なんだコレ!」「こんな写真誰に撮らしたんや!」ってボロクソに言うんですよ。もう先輩同士でもそれをやってるんですけど。

内山田:それが当時の熱量なんでしょうね。

島田:今だったらパワハラってやつですけどね(笑)。今はMacでガーッと組んでしまうけど、当時は写植発注して上がってきた2000文字くらいのボディコピーを「全部詰め直し!」とか指示されて、一文字ずつ切って…みたいなことからやっていました。「あぁコレ嬉しい!」と思いながら(笑)

内山田:もう変態ですね(笑)

これ持論なんですけどデザインって「プラモデル」なんですよ。

島田:これ持論なんですけどデザインって「プラモデル」なんですよ。パーツを作って、最終的にそのパーツたちを組み合わせる。文字ブロックを作ったり写真を撮ったりというのはそれぞれのパーツで、それを組み合わせるのがアートディレクターの仕事です。やっぱり模型を作る感覚に近いんですよ。なので、パーツ一個一個をちゃんと作っていないと、出来上がった時に「あそこ歪んでるよね…」ということになってしまう。逆にパーツの一個一個は全体のイメージを頭に入れてないと、いいパーツが作れないのです。

内山田:なるほど。考え方が面白いなぁ。うちではたまに僕とデザイナーで確執が起きたりするのですが(笑)、たぶんデザイナーは今の島田さんと同意見だと思うんです。でも僕は営業畑出身の人間だし「いいんだよ!組み上がれば!完成しないよりいいだろ?」みたいなことを安易に言ってしまう訳です。今の説明で理解できました。パーツがしっかりしないと組み上がんないものね。これでデザイナーとの関係も雪解けるかもしれない(笑)

島田:でも10%くらいは自己満足なんです。ここをガチッと作ったぞ!「島田さんそこ見えないですよ」「あぁ、見えないんですけどね~」という(笑)。ただ、当時の上司が、「俺たちはデザイナーだからね。アーティストじゃないから。」とよく言ってました。キャリアを積んで行くと自分の作りたいイメージが出来てきて、それをアーティストに無理矢理納得させてしまうことはダメだと。自分の作品になって行くんです。アーティストのものではなくて。

内山田:自分の「個」としてのデザインではなくクライアントのために作れ、みたいな。

島田:そうですそうです。それが「デザイナー」でしょう。クライアントがいて、クライアントが「赤」って言ったら「青」出しちゃダメでしょう?それでも出したいなら、「赤」って言ってもらえるようなもの、もしくは「青もいいですね」と言ってもらえるようなものを出せ、と。クライアントが納得して、その上仕上がりに満足してくれたらいいのだから。それがデザイナーの仕事。「クライアントがお金を出してくれて、おまえらが飯食えるのだから」と教わりました。それが今の考えにも繋がっているのかもしれないですね。

内山田:いい話ですね。島田さんの仕事って、ベアブリックの企画もそうなんですけど、好きだからやっているというのは前提として、自分の名前を出して「こういうものを持ってきました!」というタイプではないですよね?主役有りきの中で「これ誰がやっているの?」と見たら島田さんだったと分かるみたいな。そういうのはこの頃からきているのですかね?

島田:そうですね。「主役はベアブリックでしょ?」と。ただ主役にも負けないパッケージは作りたいと思っています。そこに自分の名前をデカデカと入れるのはダサいと思いますけどね。僕は。

内山田:人の記憶に残るものを作るって本当に羨ましいなぁ。

島田:数あるデザイナーの仕事の中で、自分が担当している仕事は、すごい趣味性が強いと思っています。どちらかというと、パーソナルに近い仕事。ジャケットの仕事にしても、自分とアーティストが「これで行こう!」と意気投合すれば、それで決まってしまったりするんですね。全く知らない上の方からNGが出るということは稀で、自分の守備範囲で進行できる、そういう意味では恵まれてるなと思います。失敗したらえらいことになりますけど(笑)。CDにしてもフィギュアのパッケージにしても、期間が限られている広告などと違って、一生お客様の手元に残るものなので。失敗した!と悔やんでるものが一生…。

パッケージデザインなんて10%くらいです。「プロダクト」という大きな視点で見れば。

内山田:ソニーのあとは…?

島田:一旦フリーになりました。で、会社を立ち上げて海洋堂さんとご縁がありフィギュアのパッケージの仕事をスタートさせました。

内山田:いちユーザーとして海洋堂さんの商品を見て、パッケージに意見があった…とか?

島田:いや…(苦笑)。趣味でチョコエッグを集めていたのですが、パッケージをもっと…「こうした方がいいのに!」というイメージがあったんです。それをなんとかしてくれないかなぁと思っていて。ある時、知人がワンフェスで宮脇社長に会えるよと言うからついて行くことに。会場で宮脇社長達を前にして、僕はフィギュアの仕事も全くしていないし、いちデザイナー、いちユーザーとして意見を言わせて欲しいとお伝えしたところ、宮脇社長から「どうぞどうぞ」と言われて。作品ファイルをご覧いただき、後日電話があり事務所に来てくださいました。趣味で集めたチョコエッグをバーッと並べているのを見て、うわっ!と言われて(笑)。「好きだねぇ~」「ええ、すごい買ってますよ~」みたいな話をして、「今日来たのは出したい仕事があってね」と言われるから「えっ?いいんですか?まだお話しただけなのに!」とお答えしたら、「これ(作品ファイル)とそれ(並べているチョコエッグ)で分かるから」と言っていただいたのが始まりでした。

内山田:それは何を作られたのですか?

島田:フルタ製菓さんの「妖怪根付」パッケージですね。で、パッケージを作っている時にそれだけだと面白くないなぁ…と思ってきて、「これカード入れませんか?」となり妖怪カードも作りました。

内山田:それは島田さんの提案…?

島田:ええ。僕が欲しかったから(笑)

内山田:常にそこなんですよね!(笑)。ユーザーとして「欲しいか?」という。ただパッケージ作るだけじゃなくて、何か必ずプラスワンがありますよね!

島田:サービス精神というか…自分でものを買った時に、「あぁ!こんなものが入っていた!」とか「こんな入れ方してるんだ!」というのも、また一つの喜びだと思っているので。

内山田:ブルーインパルスの時も、島田さん知らぬ間に横にフッと居たんだけど(笑)、たぶん、広告代理店とかデザイン事務所として売り込みに来ている訳ではなくて、いちユーザーとしてフラッと来て、その延長線上の「ここもっとこうした方がいいのでは?」というスタンスがいいんでしょうね。そりゃツカミますよねぇ。

島田:この前まで所属していた会社の社長が、もともとは食品会社の方だったんですけど、そこの作ったものがおいしくて!海洋堂さんと食玩もご一緒されていたので「こことは何かやらなあかん」(笑)と思っていました。それから宮脇社長に繋いでいただき、「そこまで言ってくれるなら一回やってみましょうか」と仕事が始まって。なんだかウマも合って、その方が独立され、一緒にやらないか?と誘ってもらいました。そこで「何か面白いことやらない?」となり、先ほどのブルーインパルスベアブリックになる訳です。

内山田:なるほど、すごい。繫がった!だけどなんだろう…?あの時代の熱量って残りますよね。

島田:残りますねぇ。当時の純度は結構高かったですよ。みんな作りたいもの作っていたし。

内山田:競争してたし。

島田:そう!クリエイティブ力が上がって行きました。

内山田:仕事はそういうところで関わっていながら、個人としてはいちコレクターとしてものを集め…

島田:…そのうちに我慢できなくなって、発売元とか会社とかに乗り込んでしまうという(笑)

内山田:紐解いて行くと「なるほどね」となるんだけど、断片的に見たらやっぱり「この人なんなんだろう?」となりますよね(笑)

でも、ブルーインパルスの時だって、いわば島田さんからの提案から始まったんですものね。もう企画屋ですよ!

島田:その企画もほとんどが、自分の欲を満たすためという(笑)。だから、自分が作りたいものを作るためには、まず作るために「どうしたらいいんだろう?」からスタートとして、ものを作るための線路を引くより前に、商売だから「どこで売るか?その売ってくれるところは満足して売ってくれるのか?嫌嫌売るのか?」「満足してこれを売ってくれるところを見つけるためにどう動けばいいか?」を考え、その土台を作りながら、線路を引く、みたいな。このバランスがなかなか難しいですね。

内山田:本当にそう思います!ここなんですよ、僕も(スタッフに)伝えたいところは!一言で言ってしまうと「プロダクトデザイン」なんですよね。企画からデザイン、流通、売り場まで。今のお話はとても重要だと思うなぁ。

島田:パッケージデザインなんて10%くらいです。「プロダクト」という大きな視点で見れば。ソニーの頃は考えていなかったけれど、自分でちゃんと「売る事」を考えなければダメだと前社長に教わりました。そうしたら「販売する会社にどうプレゼンするのがいいのか?」とか、「まずはベアブリックを理解してもらわなければダメだ!」とか、そういうところからスタートして、漸く納得して取り扱ってもらう、その流れを作らなければいけないと考えるようになりましたね。

内山田:考えないんだよな。抜けちゃうんだよなぁ。

島田:そうなんですよ。抜けちゃうんです。でもここが一番大きいのです。「遠回りが近道」というのがそこなんですけど、まずお客様がどういうものを欲しがっているか?とか、お店がこういうものを置いたらどうなるか?を考えることが、一番自分の考えるべきものに近くなるというか、ものを動かしやすくなるというか…そんな風に思います。

内山田:今日のお話って、違う業界でもハマるお話だと思います。

執念はいつも持っているんです。いろいろ動いている時に時々カチッと引っかかる時があるんですよね。

内山田:近いところでいうと、やはり東京タワーのお話もお願いします。うちでやっている日本卓上開発のジオクレイパーという商品で、ランドマークが必要で東京タワーの日本電波塔さんとのお付き合いになったのですが……またここでもこの人がいる訳ですよ!

一同:爆笑

島田:東京タワーさんとはかれこれ10年くらいご一緒させていただいてます。第1弾企画スタート当時は「建造物」をモチーフにしたベアブリックがなくて、東京を代表するランドマークですし、これはイケるだろうということでプレゼンしたのが最初です。まず「ベアブリックって何ですか?」と聞かれて説明するところから…。ちょうど50周年のタイミングでしたので「記念イヤーを祝うに相応しいアイテムです!」と。実現した際はメディコム・トイさんにもすごく喜んでいただけました。で当時、東京タワーさんがご自身でプレスリリースを出されていて、出した途端、Yahoo!のヘッドラインに入ってしまったんですよね。それを見た東京タワーさんが「ここまでインパクトあるんだ!」とびっくりされて、シリーズ化されて行きました。

内山田:どう考えてもWin×Winですもんね。カッコイイなぁ。で、行き着くところがエッフェル塔ですか!この一連の流れはすごい…。

島田:エッフェル塔は、知人が「2018年は日仏友好160周年記念なので、エッフェル塔とやれるんじゃないですか?!」と教えてくれて。その方には、昔から僕が「エッフェル塔のベアをやりたい!」と言っていたのを覚えてくれてて。「ということは、エッフェル塔がOKなら東京タワーとセットにしたらよくないですか?」と盛り上がり動き出しました。

内山田:だって、こんなタワーが2つ並んだパッケージ見たことないし!すごいなぁ。こんな仕事は真似できない…。

島田:ずーっと言い続けていたのがコロッとうまくくっついたパターンでしたね。あと、この2つのタワーって兄弟タワーみたいなデザインじゃないですか?だから絶対フィットするとはじめから分かっていましたし、あとは東京とパリで売っているイメージが欲しかったのです。パリでも売っていないと日仏友好160周年記念にならない。で、その方を介して、フランスのコレットという、歴史のあるセレクトショップで販売していただけることになり、皆でよかったよかったと安堵しました。ところが2017年の7月末に「コレット12月に閉店」というニュースをネットで見て!2018年が160周年記念だから、1月にパリと東京で同時発売しようとしていたからもう大騒ぎになりました。

内山田:あらら…

島田:もういろんな方々の尽力があって、結果的には12月10日に納品してなんとか発売に漕ぎ着けました。発売日のコレットのオンラインショップを見たら即ソールドアウトになって。

内山田:もう執念ですよね。

島田:内山田さんと飲んでる時によく話しますが、その執念はいつも持っているんです。で、打ち合わせとかいろいろ動いている時に時々カチッと引っかかる時があるんですよね(笑)

自分がちゃんと手がけたという足跡を残しているかどうか?なんですよね。やっぱり。

内山田:「SUBARU(スバル)」のベアブリックのお話も伺いたいのですが、これSUBARUさんと直接やりとりですか?

島田:直接しました。

内山田:また直接やっちゃったんですね(笑)

島田:(笑)その前に東京タワー繋がりがあるのですが、実は「スバル360」という車と東京タワーの誕生年が一緒で同じ歳なんですね。55周年の時にコラボがあり、60周年の時にはまたやりましょうねといった話をされていたそうです。で、東京タワーでベアブリックをやっているのをSUBARUの担当者の方が見て僕のところに話が回ってきました。それが2014年くらいで、SUBARUさんへプレゼンしましたが、ご事情があり企画は立ち消えになりました。

内山田:そんな経緯があったんですね。

島田:はい。そこから2年後にその担当者の方からまたご連絡をいただき部署異動でeコマースの企画担当になったとの連絡でした。「ベアブリック作りますよ!」と。

内山田:おぉ、通販なら売れるぞと。

島田:はい。通販で何か面白いアイテムはないか?ということでベアブリックが再浮上したそうです。そこであらためてプレゼンに行って、「自動車メーカーではメルセデスとBMWがすでにベアブリックを作っていますが、国産車ではSUBARUさんが初めてです!」などといろいろアピールして、最終的にGOサインということになりました。

内山田:でもね、僕がもしその立場だったら今回のデザインのアプローチまでには辿り着けなかったかもしれないですね。

島田:まずメルセデスとBMWは前例としてありますが、「SUBARUの方がカッコイイじゃん!」って思ってもらうことを自分に課していろいろ考え出しました。メディコム・トイの担当者さんにも「今までやったことのないことをやりたい!」と伝え、何度もトライ&エラーを繰り返して、「スバルブルー」を表現するベアブリックの完成に漕ぎ着けました。メディコム・トイさんも初めての試みだったと思います。

内山田:技術が詰まっているんですね。技術と努力が。

島田:詰まってますね…。それとこの企画は、始まってみないと売れるかどうかは分からないと思っていたので、やろうと決まった時に「スバリスト」と呼ばれるヘビーユーザーの方を人伝てに探して話を聞きに行きました。この方たちに受け入れられなかったらダメだと思ったんで。また、SUBARU社の皆さんがベアブリックにあまり詳しくなかったので、普通はSUBARU側で運営する通販ページやSNSで、商品の紹介文を作ったり掲載する写真を撮影したりして、ディレクション協力させていただきました。発売前は担当者さんと共に相当不安な状況の中でオンライン販売がスタートしました。自分もサンプルを持っていなかったので購入するためにサイトに行ったらページに繋がらなくて…。担当者さんに電話してみたら「アクセスが集中して、サーバーが大変なことに…。」とのことでした!「それは大変だ!すみません…」なんて言いながらも内心ではニヤニヤしていましたね(笑)

内山田:これはもの作りとしてはたまらないですね!

島田:東京タワーの時も一度サーバーが大変なことになったから2カ所目だ、と(笑)

内山田:島田さんと組む時は気をつけないと(笑)。でも、島田さんはイノベーターですね。ベアブリック自体がイノベーションだと思うし。イノベーションは分母が大きくないとビッグニュースにならないですからね。一方で、伝道師だとも思うんですよ。違うチャネルに自然な形でどんどん伝道して行っている。その結果、そこにユーザーが付いて行っているというところは非常に分かりやすいですよね。

島田:なるほど。普通はSUBARUのロゴ入れるだけで、ベアブリックとしてのポジションは確立されるのですが、それだけだとね…たぶん面白くないんですよ。自分がちゃんと手がけたという足跡を残しているかどうか?なんですよね。やっぱり。

内山田:足跡残さないと、自分の言葉で語れないですものね。

島田:そうなんですよ。でも本当に僕はベアブリックにめぐり会えたことが大きかったですね。

内山田:島田さんはベアブリックに「アーティスト」として関わっているのではなく、「ディレクター」とか「プランナー」として関わっているというのは、ある種「稀」だと思います。

島田:黒子でいいんですよ、僕は(笑)

「僕はこう考えました」ということを共感してもらう作業です。

内山田:もっといろいろ伺いたいのですが、たくさんあり過ぎてたぶんスペース的に載せられないと思うので…。対談に登場いただいている各経営者のみなさんに聞いているのですが島田さんにとって達成感を感じる時はどんな時でしょう?

島田:ベアブリックだったら、最終的に売れて「完売しました」という時なんですけど、もっと強く感じる時はプレゼンがうまくいった時ですね。そこって一番重要なポイントで。

内山田:そこなんだぁ。

島田:こちらかすると、担当者さんに「仲間」になってもらいたいじゃないですか?この人に、自分と同じテンションになってもらえないとしても、どれだけ近づいてもらえるか?というところが重要なんですよね。ベアブリックにしても、グラフィックデザインにしても、このデザインを出したら「御社はこうなります」とか「こういう見え方になります」というのを伝えるしかないんですけど、そのために「僕はこう考えました」ということを共感してもらう作業ですよね。そこで共感が得られると、もう先方の顔つきが変わってくるんです!見せた時に顔つきが変わったら、ほとんど喋らずにしょうもない話だけして終わるんですけど(笑)

内山田:なるほどね。一つの極意のような気もしますがそこが一つの達成感なんですね。

島田:はい。受けが多いデザインの仕事と違って、この入り口が開かないと終わってしまうんですよ。ベアブリックとか立体物に関して、もともとは作ることを決めていないクライアントへプレゼンするケースが多いんで、「やろう」と決まるということは、自分がやりたかったことができるということになるのです。だからそのプレゼンの時に一つのカタルシスというか達成感を感じますよね。「分かってもらえた!」という。もうそんな時には帰りにスキップして帰りますね(笑)

内山田:うちとのプロジェクトでもぜひ、サーバーが大変なことになるようなお仕事をご一緒できればと(笑)。いやー楽しかったです!今日はありがとうございました!!

島田:サーバーを大変なことにね(笑)。こちらこそありがとうございました!

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対談後記

当社は卸売を軸としている会社ですので仕事の接点はメーカーと小売店の方が中心となります。日々の仕事を繰り返していると価格や条件と在庫情報の受け渡しに注力してしまういわゆる惰性の仕事に埋没してしまう可能性があります。今回の島田さんとの対談は「価値」に対する向き合い方をあらためて思い直す時間にもなりました。自身では職業を「アートディレクター」と称されていますが、僕個人としては「プロダクトデザイナー」だと思っています。ただデザインを作るだけではなく、ユーザーのいる場所を定めて製造からプロモーションの一連のラインを俯瞰した目線で想定した上でプロジェクトの実現に執念を持って取り組む姿勢こそユーザーを動かす大切なことだと認識しました。当社も役割が分担される中で、果たして顧客やユーザーが求める仕事を提供しているかどうか見直すきっかけにもなりました。この対談を機に今後もサプライズや顧客満足を満たす仕事を一緒に取り組んでいただきたいと願っています。(内山田)