石井瑞穂

ユニオンクリエイティブ株式会社
取締役社長 石井 瑞穂氏

PROFILE

2004年にメーカーとして千葉県市川市にユニオンクリエイティブ・インターナショナル設立。
主に台湾で大手携帯メーカーや大手コンビニ向けにフィギュア等のOEM業務を中心に展開。
2006年に国内向けに販売業務開始。
2009年6月に海洋堂とリボルテックシリーズを再展開。
2014年4月1日にユニオンクリエイティブに社名変更。
2015年3月に秋葉原へ事務所移動。
最近では海洋堂ソフビ商品の「ソフビトイボックス」を中心に展開。
自社商品としてはフィギュアや雑貨等を多岐に渡り展開しております。

http://union-creative.jp/

ホビー・グッズ業界を牽引するリーダーたちにフォーカスを絞り生の声をお届けする、株式会社カフェレオ 内山田の対談企画。第8回目のゲストは、内山田とは旧知の中であり、数々のヒット商品を世に送り出してきたユニオンクリエイティブ株式会社 取締役社長 石井瑞穂氏が登場!お互いに惹かれつつも、それぞれの道をそれぞれに歩んできた先にあった今回の対談。開いているようで実は2人しか踏み入れないナチュラルトークは、明らかに今までの対談とは異なる空気感を醸し出していました。気が付けば立場逆転、石井氏取材によりカフェレオ誕生秘話があらわに!?『テック石井』こと石井氏のエンタメ性が炸裂した、愛と男気に溢れたクローズ的対談(笑)が読めるのはこの「リーダーズボイス」のみ。じっくりご堪能ください!

[スピーカー]
ユニオンクリエイティブ株式会社 取締役社長 石井 瑞穂氏
株式会社カフェレオ 代表取締役 内山田 昇平
取材日:2017年5月16日 場所:ブックマーク浅草橋
構成:里見 亮(有限会社日本産業広告社)

例えば昔から付き合っているウッチーみたいな人は「こいつ怪しいなぁ」という目でまずは見てくるから(笑)

内山田 昇平(以下/内山田):今日はお忙しいところをありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。

石井 瑞穂氏(以下敬称略/石井):こちらこそよろしくお願いいたします。はい、これプレゼント!

内山田:何これ…??

石井:いやぁ、何か仕込んでこようかなぁと思って。2人共サッカー好きじゃないですか?で、ユニフォーム着て対談してたら面白くないですか?(笑)

内山田:うわぁ〜これ嬉しいねー!ありがとうございます!!よし、着替えてこよう!

(両者しばし離席)

内山田:ということで…すごい絵面だなぁ!(笑)。改めよろしくお願いいたします。たぶん、僕と石井ちゃんが結構仲がいいということを、業界の中では知らない人が多いと思うんだよね。

石井:お互いの前職時代を知らない人が今は多いかもね。僕の前職時代の時からウッチー(注:内山田)はカフェレオだけど。その頃はあまり接点なかったよね。

内山田:そうだね。

石井:もう僕が営業ではなくなったし。たまに会うとしたらイベントで「じゃぁ飲みに行こうね!」「そうだね!」と言ってまた一年後という…。

内山田:そうそう。でも、業界の中ではたぶん石井ちゃんが一番付き合い長いよ。もうかれこれ16年。カフェレオやる前からの付き合いだから…あっ18年か。

石井:もうすぐハタチだね(笑)

内山田:腐れ縁(笑)

石井:でも、何んも変わらないよね。ずっとこんな感じ。周りのメーカーさんとかは内山田さんといえば「内山田社長いつもお世話になっております!」みたいな感じですけど…いや、僕も「お世話になっております」って言うんですけど…。

内山田:言った事ないじゃん(笑)

石井:(笑)。どちらかというと…そう…付き合っていただいているという感じですね。僕に合わせてもらっているというのはちょっと感じている。

内山田:別にそうでもないけどね。(付き合いが)長いし。

石井:変な意味ではないんですけど、こういう仕事なので嘘も方便というか…。

内山田:だいたい嘘ついてるから(笑)

石井:いやぁ、だいたい嘘もつくし、だいたい本当のこと言います。けれど、嘘ばっかりついていると誰も信じてくれなくなる(笑)

内山田:適当な事ばっかり言っていると自分でも何が本当かわからなくなるという(笑)

石井:そう!本当のこと言っているのに相手の「へぇ〜そうなんですか…」って反応見ると「あっ、今流したでしょ!」となりますね(笑)。でも今は、逆に本当のことしか言っていないんですけど、例えば昔から付き合っているウッチーみたいな人は「こいつ怪しいなぁ」という目でまずは見てくるから(笑)。それはそれで確かにありだし、そのままだしね。

内山田:でも石井ちゃん、しばらく真面目にやってるなという印象ありますよ。

石井:すごい真面目ですよ。うちのスタッフはみんな真面目だから、スタッフから見て「不真面目にやってるな」と思われたら一緒に仕事したいとは思ってくれないだろうし、僕もみんなと一緒に仕事したいので、真面目に取り組まなければと思っていますね。いや、昔から根は真面目だけどね(笑)

内山田:なんだかんだ言って真面目にやってきたからここまでやってこれたんだろうし。でも、この対談に参加していただいた経営者のみなさんそう言われますね。スタッフが真面目と。そうじゃないと会社って継続していけないんでしょうね。

やらなければ面白くならないというのはありますよね。

内山田:石井ちゃんもフィギュア業界の中では相当いろいろな経験してきていると思うけど自身ではどう?

石井:よく「海洋堂さんとのお付き合いが長いですよね」と言われますね。一方で、海洋堂の熱量が強すぎるのか、途中で離れてしまう会社さんも結構いたよね。

内山田:クリエイティブな部分とセールスの部分では互いのスタンスが違う時もあるものね。

石井:うん、ぜんぜん違う。

内山田:クリエイティブ側から言わせれば「いいものを作ればそこにセールスも付いてくる」という考え。

石井:そうそうそう。そういう考えって僕はアリだと思うんです。
ただ、海洋堂さんによく言うのが、最近、海洋堂さんの新商品をパッと見せてもらった時に「『おぉっ、すげぇこれ!』という!(びっくりマーク)がないですね」と。宮脇さんもちょっとムッとされてると思います(笑)。ないものはないと話せるようになってきたかなと思います。変な話、宮脇さん世代の模型やホビーに対する「愛」からしたら僕なんて小さなものだろうし、そんな僕に面と向かって言われたらすごく腹たつと思うんだけど…。でも、個人的な部分も会社的な部分も含めて、自分がこの業界にいるのであれば海洋堂さんとは付き合っていたいよな、まだまだ面白いことがありそうだよなと思って言っていますね。

内山田:なぜそんなに海洋堂さんと密に長くお付き合いできるのかしら?

石井:僕は基本的にプラモデルとか、それこそ組み立て家具とかを作ることが面倒で嫌いなんですね。好きなのは、作っている「人」を見たり、作った「モノ」を見ること。だから原型師さんなんて凄いもんね!「えっ、なんでそうやって形にできるんだろう?」って。自分ではできないから尊敬します。海洋堂さんもそこなんです。自分にないものがあまりに強大すぎるから、面白いから、というところだけでお付き合いさせていただいてるのだと思います。

内山田:それはビジネスとして?趣味として?

石井:今は立場上半々。でもぶっちゃけ、……8割趣味、面白さですね。

内山田:なるほど。うちでいったらスクエニさんみたいな感じだね。カフェレオ作る前から18年の付き合いをいただいているけど。

石井:あぁ!以前、FFの食玩が出た時に「どこがやってるの?このカフェレオってどこ?」みたいな話になったらウッチーだったってね。凄いな!って周りがザワついてた。

内山田:うちは仕入れて売っただけ。でも当時は営業2人で20万個くらい売ってた(笑)

石井:凄いよね。アレを取ったということが…

内山田:あっ、そういう意味でいったら一緒だよね。海洋堂さんの商品を石井ちゃんの会社で責任持ってまとめて売っているのと一緒で。ブランド力がある商品の販売数量は営業責任が大きい。当時のうちのような小さな会社がスクエニさんから販売を任されるということは、チャンスも大きいけど営業責任は相当に大きかったしプレッシャーも重かった。

石井:あの頃は勢いで数量とか「これをやる!」っていうのを決めていて、今は勢いがなくなったなんて言われるけど、そりゃぁしょうがないと思う。だってやっぱり、売り場であったり、ユーザーであったり、作品であったりと、トータルで見ないと。でも、ちょっと寂しい気もするよね…。

内山田:昔の方がリスク高かったよね?

石井:高かった!リボルテックだって最初は1種3万個スタートで。よくやったよね!と自分でも思う(笑)。2〜3種類毎月毎月入ってくるという…。

内山田:そういう話ってさ…数量の根拠ってあまりないんだよね…。「3万作るからよろしく」みたいな。

石井:「3万以上」だから(笑)

内山田:あとはその数字をやるしかないというかね。

石井:そうだったなぁ。
あと、時代もそれにノッてくれてたというのを感じてた。だって「リボルテック」をやってから、他メーカーさん達のアクションフィギュアが出てきたからね。本当に単純なただの可働フィギュアなんだけども『「リボルバージョイント」というジョイントを付けた!』『すごいものを開発した!』と打ち出し方を絞り込んで、自分たちに暗示をかけて営業やってましたね。

内山田:そういう意味では0から1を作っているとか…?

石井:そんなカッコイイものじゃないですよ~

内山田:ないか(笑)。ただ「使命感」と「面白いからやってる」っていうことだよね。

石井:やらなければ面白くならないというのはありますよね。

合コン行ったら「フィギュアってロボットとかでしょ?気持ちワルッ」って言われて、「何だこいつ?」って思ってましたからね(笑)

内山田:改めてですが石井ちゃんは最初からこの業界?

石井:ですね。『SPAWN』というアメトイを扱っていた商社が最初の会社。それが売れに売れてて。もう入荷したら出荷しているという感じでしたね。

内山田:新卒入社?

石井:新卒。でも本当は体育教師になりたかったんです。一応日体大なので。教員試験も受けたんだけど。その時の試験でショックだったのが、隣に35歳くらいのおじさんもいて、水泳とかで一緒に泳ぐとお腹ダブダブでまだ教員になれてなくて。「俺もああなるのかなぁ…」と考えたら未来が不安になって…。まぁ逃げた訳です(失笑)

内山田:最初の会社でははじめは何を担当してたの?

石井:営業です。大問屋さんというようなイメージの会社でいろいろなメーカーさんの商品を売らせてもらいました。その中に海洋堂さんがありました。海洋堂さんは日本で初めてアクションフィギュア『北斗の拳』を出して、僕は問屋やお店を回っていましたね。だから海洋堂さんとはその頃からのお付き合いです。

内山田:新卒からだと業界色も付いていないから仕事覚えは早かったのでは?

石井:いや、当時何をしていいかわからなくて…。それに毎日悩んで、こんな性格でもこう…

(女性スタッフ:フッ…)

石井:何で今「フッ」って笑ったんですか?(笑)

(女性スタッフ:すみません…)

石井:(笑)。会社来て、座って、それこそ一週間もあればお得意先さんなんて回れちゃう訳で…。

内山田:営業にマニュアルなんてないもんね。

石井:そう、悩んでいたなぁ…こんな性格ですけど(笑)

内山田:こんな性格だから社長にもなっちゃう。こんな性格じゃなかったらまともに務めてるかもって。だいたい社長ってそんな感じですよね(笑)

石井:それから2年くらいしたら仕入れになって、これがまた厳しくて…。商品企画の是非や生産数量などを仕入れ側で判断しなければいけないところもあって。相手は「おまえ判断できるの?」と思っているから、一度会社に持ち帰って検討してもやっぱり勝算立たないという時に「これは商品化にできないと思います…」と言う時が一番キツかったです。相手はみんな先輩だから、24・5歳の若僧が「何言ってんのおまえ?」みたいな。今みたいにちゃんと突き詰めて判断できなくて…。

内山田:小売側の意見を反映するような時代でもなかったよね。もうその場でいくつ作る!いくつ買う!という感じだったよね。

石井:そうそう。個人的には「売れる」と思っても、営業に持って行くと「それ売れないよ」となって。当時、仕入れは上司しかいなくて、営業はたくさんいたからそこに一人で乗り込むと「出た石井!出ました石井!」と煙たがれていましたね(笑)

内山田:まぁ営業と仕入れのぶつかり合いは仕方ないよね。
でも、当時の勤めていた会社ってイケイケな感じしたよね?もう上場するんじゃないか?っていうくらいで!

石井:大変だったですね…。あの時の、売らなければいけないとか、作らなければいけないとかが凄かったから…。当時はもういろんなことやっていて、その頃はなぜか、どこどこの社長やお偉い方が集まるような場所によく連れて行ってもらって。銀座のサロンに短パンTシャツで行ってました!「俺どこにいるんだろう?」と思いながら(笑)。ちょっと異様な空間でしたね。

内山田:15〜6年前っていったら業界もまだニッチな感じでしたもんね。今みたいにそんなに華やかではなく。

石井:そうそう。合コン行ったら「フィギュアってロボットとかでしょ?気持ちワルッ」って言われて、「何だこいつ?」って思ってましたからね(笑)

内山田:今みたいに女の子がアニメ見てグッズ買うことが公な時期じゃなかったもんね。

石井:それこそ、レンタルビデオ屋のアダルトコーナーのように、おもちゃ屋さんの奥にひっそりと美少女フィギュアが置いてあるくらいだったですよね?

内山田:ちょうどその頃ぐらいかな。指で遊ぶスケボーの玩具の「フィンガーボード」が凄い人気になったのが。「TECH DECK」だったかな。あの『フィンガーボード』を日本に入れた男ですからね!「テック石井」といって!!

石井:そうそう(笑)。テレビ局も1局以外全部出ました。「トゥナイト2」出た反応が凄かった!(笑)。本も出たし。でも僕にも先生がいて、そういうのをやっているスケボーショップがあって、そこの方に教わりに行ってました。海外の本当にあるブランドの板を小さくミニチュアにして、ブリスターパックに入れて1500円くらいで売っていました。あっ、ウッチーにもすっごく売ってもらったもんね!

内山田:僕も結構売ったよね。当時は石井ちゃんもテレビ出たりで時の人みたいで声掛けにくかったもんね。有名人になると人が変わる(笑)

石井:いやいや、そんなことないでしょ!(笑)。商品が売れたおかげではあるけど、そんなに僕、威張ってないと思う!(笑)

内山田:あっ、そっか(笑)。
で、「実演販売しないと良さがわからないよね」となり、ロフトさんとか玩具店の店頭とかでやったよね。

石井:やったねぇ。触ってもらうまでが大変なんですよ。みんなね、一度始めてしまえば夢中になってくれるんですけど。

形容する言葉がないんだけど…客観的に見て、なんかあいつらスゲーな!バカみたいだな!何やってるんだ? というところはあったかもしれないですね。

内山田: で、次の会社へ転職するんですね?

石井:そうです。その時は「海洋堂さんをやりたい」と思っていて、それが出来る会社をと探していたらその会社に出会いました。主にフィギュアの流通の仕事をしていたのですが、これからはそれだけではだめだとなって、自分たちでも版権を取得して自分たちで商品を作ろう!となり、中国の工場と直接取り引きを始めたりしました。その時作って一番売れたのが『クローズ』でしたね。

内山田:あぁ〜そうだ。クローズ凄かったよね。そういう意味では版権を取ってものを作るというのは、石井ちゃんの新たなキャリアになったんだね。

石井:そうですね。営業やって、仕入れやって、3つ目に「モノ作り」という経験をここではさせてもらいましたね。
「売れると思うからやってみよう!」という感じで始まったんだけど、一番初めの注文数が予想を遥かに下回って、「これはやばいぞ!」となったのですが…、その後一週間経たないうちに全部売れてしまって!あんなことは一生に一度あるかないかの体験で。本当に凄かったですね。

内山田:こういうケースってさ、大抵最初は注文が全然集まらないんだよね。発売したら急にくるんだよね。

石井:ですよねぇ。でも、いろいろキツかったなぁ…。僕自身モノ作りが初めてということもあったけど、どう指示していいかわからなかったし、中国とのやりとりも大変だったり…。もうフィギュアの顔見て「誰コレ?」という次元で(笑)

内山田:でも…当時はそんな感じのメーカーさんも多かったよね。今、10年前ぐらいに自身が手掛けた商品も見れないよねぇ。
恥ずかしくて(失笑)

石井:恥ずかしい…(失笑)。逆に作ってくれた原型師さん達に「ごめんなさい」って。

内山田:まぁでもクローズは本当に特化してたよね。周りが美少女フィギュア全盛の時に、唯一の「不良」!

石井:当時は『クローズ』と『リボルテック』を扱っていたので、周りのうちに対する目線は少しイケイケに見えていたかもしれないですね。まぁ、けれどそれが続いたのも5年でしたけど。

内山田:その後が、現在のユニオンクリエイティブになる、と。なんか…なんだろうな……振り幅激しいよね。当てる時もハズす時も大きいという。なんとなく見ていてそんなイメージがあったなぁ、石井ちゃんたちって。

石井:そう、あるある(笑)。「絶対無理だよって思うことを…何やってるんだ?あいつらは?」という風に思われていたかもしれないですね。

内山田:でも今までこの業界でずっとやってきてさ、どんな風に石井ちゃんは感じてるの?

石井:この業界ウェットじゃないですか。基本。ドライかなと思いきや、結構ウェットな人多いと思うんですよね。

内山田:結局「人」の部分で何とかなっちゃってるところもあるよね。

石井:そう。これはいろんなところでずっと言っているんだけど、僕は「ラッキーマン」です、と。だって、会社潰れて、次の会社クビになって、今社長やってる訳ですからね(笑)

内山田:そういう意味で言えばそうだけど…。社長になった今は自分の生き方や経験を反映してるんじゃないの?

石井:結構苦しいですよ。苦しいし悩むし(笑)。今になって思うけど、やるのかやらないのかは自分で決めるじゃないですか?「やるのか?」「やるんだったらとことんやるぞ!やらないんだったらとことんやらないぞ!」という。この「とことん」があるかないかは大きいと思うんですよね。

内山田:だいたいオーナー会社だとオーナーが決めて実行するって感じだけど、石井ちゃんたちって過去の会社でも社長はいるんだけど「自分たちでやってきた!」みたいなのがあるじゃない?

石井:そういう人たちに恵まれたというのはありますね。もちろん自分たちの動きに「責任も持てよ」とも言われたし、でもやらせてもらえたという方が大きいですね。

内山田:サラリーマンってあんまり責任取らされないんだけど、石井ちゃんはサラリーマンなのに責任取ってきたという印象が(笑)

石井:じゃなかったら今になんないですよ(笑)

内山田:だから当時は外から見ていて、「大変そうだなぁ」と思っていて…。

石井:あっ、やっぱり大変そうに見えた?(笑)

内山田:見える、見える(笑)。経営者としての感覚はまた違うんだけど、サラリマーンなのに凄いなこの人たち、ってね。

石井:まぁ、うん、ほんとなんというか、形容する言葉がないんだけど…客観的に見て、なんかあいつらスゲーな!バカみたいだな!何やってるんだ?というところはあったかもしれないですね。

内山田:男子校じゃないけど、ほんと自由にやっているよねって感じで。「教師うるせー!学校だけ用意しとけ!あとは俺たちの好きにやるから!」みたいな(笑)

石井:うんうん。でもそれ若干『クローズ』になってるから!(笑)

内山田:あっ、そっかそっか(笑)。鈴蘭だね(笑)

石井:その中にもやっぱり縦割り横割りの人間関係があって、それがちょっと崩れた時にうまく行かなくなるなぁと思いました。会社を大きくするために上に新しい人が入ってくるとか、急に新しい開発担当が入ってくるとか、そのロジックにはまらないものが入ってきた時に、自分弱かったなぁと思います。昔の自分は。あの時は妙につっぱっていたというか…。

内山田:つっぱっていたんだろうねぇ。個人としてのタイプは石井ちゃんみたい人もこの業界には多いと思うんだけど、組織的な体でそういう雰囲気出していたのはたぶん石井ちゃんのところぐらいだったよね。頑なに硬派だったし、自分たちのやり方を貫くみたいな雰囲気があった。今もそうかもしれないけれど。それって個性だと思う。

石井:みんなそうだと思うんだけど、楽しく仕事はやりたいですよね。では楽しくやるって?と考えた時、考えるよりは動いちゃえという方が強かったのかな。まず売りに行こうぜ!とか、まず意見聞きに行こうぜ!とか。考えれば考えるほど、「ならばやらない方がいいや」となる訳です。

内山田:わかるわかる。僕もですね、今ほら『ジオクレイパー』をやってますけど、あれも突き詰めて考えて行ったら普通はやれないもん(笑)。損得を考え出したら成立しないから。感性的であっても明確な企画であればまずは成立させて後詰めでロジックを組み立てていくみたいな。

石井:それは非常に海洋堂さん的考え方に近い感じがします。だから似てるんだよね。もの作りの考え方として「まずはいいものを作れば売れるんじゃないか」と思っているでしょ?

内山田:残念ながら石井ちゃんのような凄腕のセールスパートナーがいないので…(笑)

石井:そんなことないですよね?(スタッフを見回して)みなさん怖いんですか?僕はねぇ、ウッチーは怖いんじゃないかと思うんですよ(笑)。ちゃんと朝出社したら「おはようございます!!」って言ってる?

内山田:そりゃ言いますよ!(爽やかに)「おはよ〜う!!」って(笑)

石井:そうじゃないでしょ?(だるそうに)「おぅ…っす…」みたいな感じでしょ?そういうところからです。俺なんか一番会社で大きい声で挨拶しますから!たぶん!!

内山田:基本だよね。やっぱり挨拶は大事だよなぁ…。

石井:(内山田に向けて)ほんと、挨拶大事ですからね!!それから始まり……

内山田:ちょっと待って!なんで俺、急に攻め込まれているの!?(笑)

一同:(笑)

石井:逆に追い込むのも面白いかなぁと思って(笑)

これは2つ目の会社からずっと言い続けているんだけど、「いつでも崖っぷち!」って思っておくようにしています。

内山田:では次に、石井ちゃんが社長としてやっていることってありますか?

石井:社長ではない。皆と一緒だと思って仕事しているかもしれないですね。

内山田:社員の人たちとの距離感。

石井:そうそう。うちは別にオーナーがいるから、そことのすり合わせは自分がしっかりやろうと。

内山田:言い方悪いけど、雇われ社長みたいな。

石井:そう、雇われです!だからこそ、みんなと一緒だと思っていますね。今までの「みんなの石井ちゃん」から、急に「ユニオンクリエイティブの石井」になっちゃったんだけど(笑)

内山田:俺は前から「ユニオンクリエイティブの石井」って思ってるけどね。

石井:あっほんとに?嬉しい、というかなんというか…。

内山田:さっき「雇われ」って言ってたけど、実質オーナーと同じようなことをやっていると思ってました。あくまで外からの印象で。途中から社長になったんだよね?俺は前から社長だと勘違いしてました。

石井:あっ、それみんなに言われます(笑)。当社の現在形は僕ともう一人の人間で作ってきたのかもしれないですね。そう、だから「監督」に近いかもしれない。チームを作るための監督業。

内山田:なるほど。プレイヤーもやりながらの。だから「生粋のリーダー」なんだろうね。「俺はリーダーに向いてないよ」なんて言いながらずっとやっていることはリーダー。実は最初から。

石井:「生粋のリーダー」っていい言葉じゃないですかぁ(笑)

内山田:でも、昔から社長と言ったら、「銀座で飲んで毎日ゴルフやって会社こなくていい」みたいなイメージあったけど…。

石井:あと銀行の人と眉間にしわ寄せて話している…。

内山田:こんな社長いないよね。たまにテレビドラマで出てくるけど(笑)

石井:もう、すみませんって感じです。袖伸ばしたくなっちゃう。半袖だからないけど(笑)

内山田:海洋堂さんの商品も継続して販売しているけど、そういう一貫した仕事の意志っていいよね。いろいろな事もあったと思うけど今もブレずに継続している。

石井:けど不器用ですよ。失敗した人の方が強いのかなぁというのは、自分に置き換える訳じゃないけど思っているかもしれない。僕はたぶん成功していたらぜーんぜんダメな人間になっていると思うので。すぐ調子に乗って溺れるから(笑)。
これは2つ目の会社からずっと言い続けているんだけど、「いつでも崖っぷち!」って思っておくようにしています。今までの経験上、それがなくなった時に失敗する。思っておくようにしているんだけど、ほんとに調子に乗って一瞬それが消えた時、急に失敗します。その気持ちを持っていなかった期間が2〜3ヶ月あったら、その時決めたことは必ずうまく行かない。それこそスタッフ全員が面白いと思ってやっていなかったことに後から気が付きますね。

内山田:危機感を持ち続けることはハードだけど重要。

石井:そんなにカッコイイものではないですよ。「崖っぷち感」(笑)。
けど、よく生き残っているとは思いますね。

内山田:ほんとそうだよね。お互いに。

石井:ウッチーは前職のあとカフェレオ作るまでに一瞬消えた?

内山田:消えてないよ。結局、俺も前職の時に自分の仕事で在庫を抱えてしまって、当時の社長に資金的に凄い迷惑かけて、責任取って辞める訳ですよ。「やりたいことはわかるけど、これ以上事業続けられない」となって。だからクビだよね。

石井:えっ、俺と一緒なの!?

内山田:そう。で、もうこの業界離れようと思ったんだよね。でも販売店やメーカーの担当者の人達がこの仕事どうなるんだという話になって。当時ファイナルファンタジーのグッズを問屋として販売していた会社がなかったからね。それで当時の社長に相談したら、自分で作った在庫を次の会社でも引き続き売るのだったらいいよと言っていただいて設立したのがカフェレオだったの。

石井:そうなの?それ知らなかった!!

内山田:だから前職に在籍していた最後の月は、当時の社長に謝りながら設立の準備させてもらって…もう後ろめたいことと前を向くことが一緒に動いているという感覚だったなぁ。だから訳わからなかったよね。

石井:へぇ〜そうだったんだ…。失礼かもだけど、面白いこの話!で、その後はどんな展開だったんですか?

一同:(笑)

内山田:立場逆転みたいな(笑)。いや、その会社で失敗したのだから、正直、次同じことやっても失敗するんだろうなと思っていたよ(笑)。それに、失敗しちゃったものをこっちでうまくやっちゃったら前職の社長に申し訳ないし。最初はコツコツ前の会社の在庫を仕入れたり新商品はメーカーから買ったりして、ひたすら地道にFFグッズの営業してました。なんとか食べていたんだけど、その1年後ぐらいに食玩ブームがやってきた訳ですよ。FFもモンスターのフィギュアが入った食玩がコンビニルート向けに発売されるんだけど、少し在庫枠あるからカフェレオで売っていいよとなり。「ありがとうございます」と言ったら数量が20万個ぐらいあったのかな。後から、ええっー!って。

石井:あの時代は最低でも10万個以上みたいな感じでしたよね。けれど凄い売れたでしょ?

内山田:売れたね。でも最初はそれこそ石井ちゃんの話ではないけど、入荷してくる数量は決まっているけど受注の数量がさっぱりで。こりゃまじでヤバいかなと思っていたら、コンビニの在庫が瞬殺で売り切れてユーザーがうちの取引先に走ったわけ。取引先の店舗さんから「あるだけ在庫くれ」と言われたのは後にも先にもあの時だけかな。最初は「売るほどありますよ」って返事してたけど。

石井:「売るほどありますよ」って決まり文句ですよね。僕もよく使います(笑)。
そうだったんだ。その前の歴史にはそんなことがあったんだ…。でもコツコツやっていた中で、ある時大勝負をかけたんだよね?それはなぜ?

内山田:「断る」という選択肢がなかったからね。そもそも。断ったら関係切れるし。

石井:でもね、僕が海洋堂さんとお付き合いするのとちょっと近い気がする。もう「やんなきゃ!!」って。

内山田:崖っぷちなんだけど、崖がどこだかわからないみたいな(笑)

石井:少しだけ思っていたのが、(崖から)落ちてもなんとかなるだろう的な発想だったなぁ。

内山田:わかるわかる。

石井:なんか考え方近いじゃないですか。ヤバいですね(笑)。
でも、そういう時の熱量の伝わり方って大事だと思うんですよ。それこそ僕らもリボルテックやる時は当時の営業担当達とお互いの背中見ながら任せ合えてたと思いますね。

内山田:なんとなくみんな、役割みたいなものがわかっていたよね。あと、強気だったよね?

石井:強気だった。責任を持った考え方はちゃんと言ってたし行動も取ってた。

内山田:たくさん売らなければいけないんだけど、転売屋の雰囲気があるところには売らなかった。生意気なんだけど。だから昔は生意気だって嫌われてたよ。

石井:けど、それは正しかったね。

内山田:そうだね。でも、転売屋だと思っていたところが勘違いで、後で怒られたりしました。飲みの席の度に言われるもん(笑)

有って欲しい。ユニオンクリエイティブっていう会社がずっと。

内山田:そろそろ佳境ということで、みなさんに聞いている質問を。石井ちゃんにとって達成感はありますか?

石井:達成感、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、、。
ごめんなさい、「達成感」がわからないかも。例えばワンフェス終わった後にみんなで「お疲れ様!」って飲むお酒の時とかはあるけれど…仕事での達成感というのはまだないかも…。ここカットになるかもしれないんですけど、僕、まだ達成していないんでしょうね(笑)

内山田:いや、ぜんぜんカットじゃないでしょう!それは。大切なことですよ!

石井:さっきも話したけど…海洋堂さんに対してリスペクトはしてるんだけど、自身の実績として悔しいんですよねやっぱり。前を走るメーカーさん達が出てくると「俺は何やってたの?」って思ってね。なんにもしてないんですよ。まだ。だから達成感がないんだと思います。

内山田:それ凄く大事ですよね。

石井:たぶん「達成感」というより、商品一個一個作る時に「もっとできたのに!」というのはあるかもしれないですね。突き詰めてやらないと、勝てないというのは頭にあるかもしれない。

内山田:「勝つ」というのはセールスってこと?

石井:「いい!」って言ってもらえるということじゃないですかね。商品を見た人が「!」となってくれるのを見て、「よし『!(びっくりマーク)』つけたぞ!」というのがいいですよね。「やられた!」って思ってもらいたいし。僕がいつも「やられた!」って思ってるから(笑)

内山田:それいいですね!サッカーに例えると、ただ点を取るんじゃなくて、フリーキック決めたり魅せるシュート決めたいってことでしょ?

石井:あぁそうかも。「あんなシュート打てるの!?」ってやってみたいけど…正直俺ビビりだからできないんですよ(笑)。「しょうがないからおまえに蹴らしてやるよ」ってビビり隠しの権利渡し(笑)

内山田:こういうところが面倒くさいよね(笑)

石井:(笑)

内山田:では、ポジション的にはどこタイプなの?

石井:今はキーパーじゃないですかね。でっかい声を後ろから出して…。

内山田:ゲームメイクはしてないの?

石井:してないしてない。

内山田:(スタッフに向けて)社員から見るとどうですか、今の意見は?

(スタッフ):今の例えは上手いなと思ったんですけど、後ろから全体を見て指示を出しているイメージがあります…。

石井:でも、キーパーだって点入れられるからね。ロスタイムになったら前出てきて、コーナーキックからのを決めればいいし(笑)。手も使えるし、足も使える。フォワードになるべき人は、今は年齢が若い人や経験が浅い人がやった方がいいと思ってます。点はなかなか取れないかもしれないけれど、いずれ決められるようになると信じてるから。

内山田:なるほどね。では最後の質問です。ユニオンクリエイティブさんは今後どういう風になって行きますか?

石井:なんだろうな……僕の経験からの気持ちが大きいかもしれないんですけど、ずっと有って欲しいですね。自分が働いていたい。皆がずっと定年まで働ける会社。そういう会社であって欲しいですね。人も辞めて欲しくないし、どんどん増えていって欲しい。もちろん辞める人は、年齢であったりやりたいことがあったりといろいろだろうけど…。有って欲しい。ユニオンクリエイティブっていう会社がずっと。

内山田:いいよね、「自分が働いていたい」というのがシンプルでいいよね。

石井:過去にお世話になった会社が倒産するという経験がありますからね(笑)。マイナスの経験だったのが逆にプラスになっているので、だから有って欲しいんです。自分も居たいし。

内山田:いやいや凄いよかったです。ありがとうございました!

石井:なんだか…最後の話とか、若干本音を話してしまったようで恥ずかしいんですけど…(笑)。ありがとうございました。

対談後記

当社のスタッフも設立当初の状況を知る人はほとんどいなくなりました。今でこそ当たり前の環境も当時に試行錯誤を繰り返しながら作り上げられたものの積み重ねですが、そういう時期があったからこそ今につながっていると確信しています。設立以前からの付き合いであるユニオンクリエイティブ石井社長は将来のことを考える余裕も無く目の前の事にひたすら向き合っていた時代からの戦友です。フィギュア業界は好きを形にできる楽しい仕事ですが、ユーザーの方々からの評価がセールスに直結する厳しい業界です。
その業界の中で長年さまざまな経験をしながらも今もなお最前線を走り続ける石井社長のバイタリティはこの仕事が好きだからこそだと思いました。
ユニオンクリエイティブさんとの会社としてのお付き合いは普段は現場のスタッフ同士が担当しており、石井社長とは節目でお会いすることが多いのですが、たとえ1年ぶりの再会であっても学生時代の友人と会うような安心感があります。今はお互いに会社を率いていく立場ですが、たくさんの「!」を仕掛けていく付き合いを続けていきたいと思っています。(内山田)